石原慎太郎という人

石原慎太郎さんが石川文洋さんのルポ『ベトナム最前線』に書いた序文について本多勝一さんがまた書いている。おなじみの話であるし、二重引用にもなってしまうが、やはり重要だと思うので、引用する。

話はこうだ。本多さんの驚いたことに、要するに、「サイゴン政府軍の砲兵陣地で解放戦線または解放区の住民に対して石原氏が大砲の引き金を引こうとしたのだ。石川氏が顔色を変えてそれをやめさせた。」

「私はこのあと解放区の取材にはいっていたから、時間と場所がすこしずれれば、ことによると石原氏の撃った大砲で私が殺された可能性も、決して空想次元のものではないだろう。」

「石原氏はこのとき示した体質を変化させることなく、むしろ一層増幅してきたようだ。靖国神社復活に精魂を傾ける極右集団『青嵐会』の有力メンバーとなり、日本の核武装を積極的に主張し（…略…）」
（本多勝一。「貧困なる精神　469」。『週刊金曜日』4月8日号。）

子供の遊びではない。石原慎太郎さんは、人を殺す本物の大砲を撃とうとしたと言っているのである。

子供がたとえ人を殺す遊びをしたとしても、それは普通本当に殺そうとしているのではない。単に大人の世界を反映しているに過ぎない。それを子供は遊びという形で理解しようとしているに過ぎない。

ところが石原慎太郎さんは「遊ぶように」本物の大砲を撃とうとするのだ。
人を現実に殺すという想像力が欠けているからこそ、簡単に撃とうとする。

子供兵士になることを強制される環境にない子供は、現実に人を殺さないからこそ、遊びという形で人を殺す空想をする。
ところが石原慎太郎さんは、現実には殺さないという子供の理性を持ち合わせず、遊ぶフリをして本当に人を殺そうとするのである。

この一つのエピソードだけの話ではない。ここに示された態度はそのまま戦争に対してどう思うのかという態度に表れる。

石原慎太郎さんは殺す側の人間であり、殺される側になってみたらどう思うのか、侵略される立場だったらどう思うのか、その想像力が欠けている。

現実への想像力が欠けているから、遊ぶように人を殺せる。だから遊ぶように社会的弱者を思いやることがない。
このような人に権力を持たせてはならないのは分かりきったことではないだろうか。

ところがこのような人は多数派だ。遊ぶようなつもりで石原慎太郎さんのような人に権力を持たせる。
殺される側に対する想像力のない人たちが、遊ぶようなつもりで軍需産業を温存し、金が目的のアメリカの戦争による人殺しを援助し続ける。

人を殺すつもりではないのだろう、人を殺すなんて思ってもみないのだろう、だから何の気なしに「多数派の」人を選んでしまうのだろう。

人を殺すことを意図していないならば、人を殺す為の道具を製造する軍需産業からはいっそ手を引いたらどうか。

軍需産業などについて考えたくないのなら、拒否したらどうか。

そのために政治家を選ぶ一票を使ったらどうなのか。

選挙とは、誰々よりは誰々の方がマシ、となるべくマシな方を選ぶものだと私は思っている。
所詮、すべての点にわたって同意できるような個人や政党などいるわけがない。

許容範囲は人によって異なるが、しかし許容範囲から外れる候補だけだとしても、マシな点を見つけ出し、少しでも、一歩でも、一点でも、マシな候補に票を入れるべきではないだろうか。

今回の大阪府議会選挙で池田市からは民主党の井上あきらさんと維新の会のおくの康俊さんしか候補がいなかったので、白紙にしようか民主党にしようかさんざん迷った挙句に、井上あきらさんの名前を私は書いた。

どうでも良いような気になっていたし、選挙を棄権する人の気持ちも分かる気がしたが、しかし維新の会の代表である知事の橋下徹さんの大型開発の推進をはじめ問題のある言動の流れは止めさせなければならないと思ったからだ。
しかし私の投票した人は落ちた。

最悪の人が選ばれる可能性がある限りは、その人を当選させない為にこそ、選挙に行くべきではないか。

今回の選挙に関連して注目するべきと思われる記事。

街頭演説をしていた東京都知事選候補者の元参院議員、小池晃氏（５０）＝共産推薦＝にナイフを所持して近付いたとして、警視庁は２６日、銃刀法違反（所持）の現行犯で、（中略）容疑者（７１）を逮捕した。捜査２課によると、（中略）容疑者は「あまりにもうるさく、ナイフでも見せればやめるだろうと思った」などと容疑を認めている。
　同課の調べによると、（中略）容疑者は２６日午後５時５５分ごろ、自宅近くの高島平団地内の広場で切り出しナイフ（刃渡り約７・５センチ）を所持。街頭演説中だった小池氏に「うるせえんだよ」などと言って、約３メートルの距離まで近付いた。（中略）容疑者は警戒中の高島平署員に取り押さえられた。
（msn. 産経ニュース　2011.3.26 22:54
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110326/crm11032622540004-n1.htm）

候補者事務所に脅迫状

鳥取　共産党地区委が告訴へ

鳥取県議選（鳥取市区）に立候補している日本共産党の市谷とも子事務所に8日、カッターナイフの刃をはりつけた脅迫状が届いていることがわかりました。

6日付の消印。差出人は「右翼暴力団組長」を名のり、「落ちろ。当選しても失脚させたる」「うちにや、山ほどガソリンや灯油がある」などと脅迫しています。
（『しんぶん赤旗』4月9日付け15面。）

政治について関わりたくないという印象を持つ人の気持ちも分かる。

だが政治を怖いものにしているのは誰でどんな社会なのか、せめて考えて、せめて投票して欲しい。